工場売却の費用について!税金や解体費の内訳も解説

工場売却の費用について!税金や解体費の内訳も解説

工場を売却する際には、税金や解体費用などのコストを正確に把握し、適切に準備することが大切です。
とくに、解体費や土壌汚染対策費は高額になりやすいため、売却前に確認しておく必要があります。
また、工場の状態によっては解体を行わずに売却できるケースもあるため、慎重な判断が求められるでしょう。
この記事では、工場売却時に発生する主な費用や、コストを抑えるポイントについて解説します。

工場売却時にかかる税金

工場売却時にかかる税金

工場を売却する際には、さまざまな税金が発生します。
これらの税金は、売却者が個人か法人かによって異なるため、注意しなければなりません。
以下に、主要な税金について詳しく解説します。

所得税

個人が工場を売却して利益を得た場合、その利益(譲渡所得)に対して所得税が課されます。
この譲渡所得税の税率は、所有期間によって異なります。
具体的には、所有期間が5年以内の場合は39.63%、5年を超える場合は20.315%の税率です。
譲渡所得の計算方法は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額となります。
取得費とは、購入時の価格や購入に伴う諸費用を指し、譲渡費用には仲介手数料や測量費などが含まれます。
なお、取得費が不明な場合は、概算取得費として売却価格の5%を取得費とすることも可能です。

法人税

法人が工場を売却した場合、得られた売却益は法人税の課税対象となります。
中小法人の場合、年間所得800万円以下については15%、それを超える部分は23.2%の法人税率が適用されるのが一般的です。
復興特別法人税は現在廃止されていますが、地方税や法人住民税、事業税も加わるため、実際の負担は計算が必要です。
資本金や地方税などの要素によって最終的な負担率は異なるため、別途計算が必要になります。
売却益の計算は、売却価格から取得費と譲渡費用を差し引いた金額となります。

消費税

工場の売却において、建物部分の売却には消費税が課されますが、土地部分の売却は非課税となります。
消費税率は現在10%であり、建物の売却価格に対して適用されます。
ただし、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、消費税の免除を受けることが可能です。
また、事業者が基準期間中に1,000万円超の課税売上高を有していれば、消費税の納税義務が生じます。
これらの条件を踏まえ、早めに準備することが大切です。
消費税の納税義務がある場合、売却代金の受領時期や契約内容によって、申告・納付時期が異なることがあります。
そのため、事前に税理士などの専門家に相談し、適切な対応をおこなうことが重要です。

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工場売却時にかかる解体費について

工場売却時にかかる解体費について

工場の売却を検討する際、解体費用は重要な要素です。
解体費用は、建物の構造、規模、立地条件、アスベストの有無など、さまざまな要因によって大きく変動します。
以下に、これらの要因と具体的な費用相場について解説します。

建物の構造による解体費用の違い

解体費用は、建物の構造によって大きく異なります。
一般的に、木造、軽量鉄骨造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の順に解体費用が高くなる傾向があります。
木造は取り壊しや廃材の処分が比較的容易であるため安価なケースが多く、SRC造では重機や特殊技術が必要となる分、費用が高くなるのです。
SRC造では、1坪あたり5万円~9万円程度の費用がかかることもあり、重量鉄骨造などと比べても高額です。

建物の規模と立地条件による費用の変動

解体費用は、建物の規模が大きいほど総額は高くなりますが、1坪あたりの単価は下がる傾向があります。
たとえば、10坪未満の工場では1坪あたり4万8,000円前後の費用が発生するケースがあり、70坪以上の場合は1坪あたり2万3,000円程度まで下がることがあります。
また、重機の出入りがしやすい場所や、周囲に建物が少ない場所では解体作業がスムーズに進行し、費用を抑えやすくなるでしょう。
一方、狭い道路に面している場合や周囲が密集している場合は、作業が難航し費用が増加する可能性があります。

アスベストや有害物質の有無による追加費用

古い工場には、アスベストなどの有害物質が使用されている場合があります。
これらの有害物質が含まれている場合、特別な安全対策と除去作業が必要となり、解体費用が大幅に増加します。
アスベスト以外にも、水銀やポリ塩化ビフェニル(PCB)などの処理費用も加算されることがあるため、事前調査が欠かせません。
解体を検討する際は、複数の解体業者から見積もりを取得し、費用や作業内容を比較検討することが重要です。

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工場売却にかかる土壌浄化費用について

工場売却にかかる土壌浄化費用について

工場の売却を検討する際、土壌汚染の有無とその対策費用もポイントでしょう。
とくに、工場跡地では有害物質による土壌汚染が懸念され、その浄化費用が売却計画に大きく影響を及ぼすことがあります。
以下に、土壌汚染に関連する有害物質の種類と、土壌調査および浄化にかかる費用について解説します。

有害物質

工場の操業に伴い、さまざまな有害物質が土壌に蓄積される可能性があります。
代表的なものとして、重金属類(鉛、カドミウム、六価クロムなど)、揮発性有機化合物(トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなど)、農薬類、ポリ塩化ビフェニル(PCB)などが挙げられます。
これらの物質は人体や環境に悪影響を及ぼすため、適切な管理と処理が求められるのです。

土壌調査

工場の売却前に、土壌汚染の有無を確認するための土壌調査が必要です。
一般的に地歴調査で土地の過去の利用履歴や有害物質の使用状況を確認し、表層土壌調査やボーリング調査によって汚染の範囲や濃度を特定します。
地歴調査は簡易タイプで7万円から、標準タイプで15万円からなど、調査範囲に応じて費用が変動します。
表層土壌調査やボーリング調査も敷地面積や分析項目が増えるほど費用がかさむため、複数の見積もりを比較すると良いでしょう。

土壌浄化費用

土壌汚染が確認された場合、適切な浄化対策が必要となります。
主な浄化方法としては、汚染された土壌を掘削して搬出する掘削除去や、現場で汚染を処理するオンサイト浄化、土壌を掘削せず直接処理する原位置浄化などがあります。
掘削除去では1立方メートルあたり1万円前後の土工事費用に加え、運搬費が1立方メートルあたり5万円以上かかる場合も少なくありません。
オンサイト浄化や原位置浄化では、揮発性有機化合物や重金属など汚染物質の種類によって薬剤や処理方法が異なるため、1立方メートルあたり数万円の差が出ることがあります。
これらの費用は汚染の程度や範囲、使用される技術、地域の状況などによって大きく変動します。
重金属で汚染された土壌の処理費用は、運搬費を含め1トンあたり数万円かかる場合も考えられるでしょう。
浄化対策を実施する際には、行政への届出や許可が必要となる場合があるため、専門家のアドバイスを受けながら進めることが大切です。

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まとめ

工場を売却する際には、税金や解体費、土壌浄化費用などの発生する費用を把握し、事前に準備することが大切です。
とくに、売却後の手取り額を正確に計算するためには、税金の仕組みを理解し、必要な手続きを確認しておきましょう。
また、工場の状態によっては解体が不要なケースもあるため、売却前に専門家の調査を受け、最適な計画を立てることが重要です。