貸工場で換気が必要な理由とは?換気が必要な回数や換気方法について解説

貸工場で換気が必要な理由とは?換気が必要な回数や換気方法について解説

工場で働く方々の健康を守るためには、感染症や熱中症、有毒ガスなどへの対策がとても重要です。
そのためには「換気」について正しく理解しておく必要があります。
しかし、工場のような広い空間では、窓を開けるだけでは十分な換気ができません。
本記事では、貸工場で換気が必要な理由や必要な回数、換気方法について解説します。

貸工場で換気が必要な理由とは?

貸工場で換気が必要な理由とは?

貸工場を借りる際、設備や立地はもちろん重要ですが、「換気」の確保も見落とせないポイントです。
感染予防・熱中症対策・カビ対策の観点から、貸工場で換気が求められる理由を解説します。

換気が必要な理由①感染予防のため

貸工場で人が複数集まって作業する場合、ウイルスや細菌による感染リスクが高まる可能性があります。
とくに、近年の感染症拡大の経験からも分かるように、密閉空間で作業をおこなうと、空気中の病原体が滞留しやすくなるため、こまめな換気が必要です。
工場は天井が高く広々としているため、一見換気が良さそうに見えますが、実は空間が広いほど空気の入れ替えが難しく、換気不足になりやすいです。
なお、厚生労働省は、感染症予防のために「ビル管理法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)」の基準を満たす換気方法を推奨しています。
工場自体は、ビル管理法が定める「特定建築物」には当たりませんが、感染症対策のためには、この基準に沿った「1人あたり毎時30㎥」の換気量を確保することが重要です。

換気が必要な理由②熱中症対策と労働者の健康管理のため

機械設備や作業による熱がこもりやすい貸工場では、熱中症対策としても換気は重要です。
作業中に発生する熱が十分に逃げない環境では、室温が上昇し、作業者の体温調整が難しくなる恐れがあります。
気温が高くなる夏場だけでなく、熱がこもりやすい室内では、一年を通じて空気の循環が大切です。
空気を循環させると熱を拡散し、温度の均一化を図れます。
また、熱中症は集中力の低下や倦怠感を引き起こし、作業効率に大きな影響を与えます。
そうならないように、従業員の健康管理のためにも、適切な換気で快適な作業空間を維持しましょう。

換気が必要な理由③カビ対策のため

工場で取り扱う製品や保管する資材によっては湿気が大敵となり、カビの発生による製品の劣化や設備トラブルが発生する可能性があります。
貸工場だからこそ、建物自体のメンテナンスや衛生面にも注意が必要です。
空気中の水分が多い環境では、カビや腐食が進みやすくなります。
また、カビやほこりは、アレルギーやシックハウス症候群などの原因になり、従業員への健康リスクも引き起こします。
定期的な換気と除湿器などを併用し、室内の湿度を適切に保ちましょう。

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貸工場で換気が必要な回数とは?

貸工場で換気が必要な回数とは?

快適かつ安全な作業空間を維持するうえで、「どのくらいの回数で換気すれば良いのか」との疑問をお持ちの方も多いでしょう。
貸工場の作業環境を守るために知っておきたい換気回数の考え方を解説します。

建築基準法から読み解く最低限の換気量

建築物の設計や使用に関しては、建築基準法の規定を守らなければなりません。
建築基準法とは、建物のなかで人が健康に過ごせるよう定められたルールのことです。
建築基準法では、換気扇を使って換気をおこなう場合、必要な換気量は「人が活動するのに必要なスペース」と「人が呼吸する空気の量」を基準に計算します。
一般的な居室では、人が常時滞在する空間に対して、必要な換気量が定められています。
具体的には、住宅などであれば、1時間あたりの空気の入れ替え回数が0.5回以上(機械換気の場合)が基準です。
しかし、工場や倉庫などの産業用施設では、設備や作業内容に応じて必要な換気量が大きく変わります。
たとえば、自動車整備工場なら1時間に8~12回、熱処理・鋳造・鉛造をおこなう工場なら1時間に10~30回、メッキ工場なら1時間に15~30回の換気が必要とされています。
建築基準法の「最低限の基準」をクリアするだけでなく、実際の作業環境を考慮した上乗せ対策が不可欠です。
たとえば、有機溶剤やホコリが発生する工程がある場合、一般的な工場よりも多くの換気が必要になるケースがあります。
ご自分の工場で、具体的にどのくらいの換気量が必要なのか知りたい場合は、専門の業者に相談してみるのがおすすめです。

適正な換気回数を確保するためのポイント

適切な換気回数を実現するには、以下の点を押さえましょう。
換気設備の能力を把握
換気扇や送風機の風量(㎥/h)を確認し、工場内の体積に対して必要な回数をまかなえるかを検証します。
吸気と排気のバランス
排気だけ強化しても、外気を十分に取り込めないと、効果的な空気交換ができません。
吸気口の確保やファンの配置をバランス良く設計しましょう。
建築基準法だけでなく衛生基準も考慮
最低限の法律基準を満たすだけでなく、作業員の健康や製品品質、作業効率を考慮した運用ルールを設けます。
貸工場の場合、設備の追加やレイアウト変更が借主の自由度によって制限されることがあります。
そのため、契約前に換気扇の数や位置、窓の有無などをしっかり確認し、「1時間あたり何回の換気が実現できるか」を具体的に把握しておくことが重要です。
建築基準法の基準を踏まえつつ、作業内容や人数に合わせた換気計画を立て、安全と効率を兼ね備えた快適な工場環境をつくり上げましょう。

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貸工場を換気する方法とは?

貸工場を換気する方法とは?

貸工場を快適かつ安全に利用するためには、適切な換気方法を選択し、効率よく空気を循環させることが重要です。
なかでも、「局所換気」「プッシュプル換気」「置換換気」は、現場の状況や作業内容に応じて導入が検討される代表的な方法です。
それぞれの特長を理解し、適切に運用すると、作業者の健康リスク低減や生産性向上につなげることができます。

①局所換気

局所換気とは、有害物質が発生している場所の近くに排気口を設置して、直接外へ空気を排出する換気方法です。
局所換気の方法なら、有害物質が広がる前にピンポイントで空気を排出できるため、室内への拡散を防ぐ効果があります。
身近な例としては、キッチンやトイレにある換気扇が挙げられます。
ただし、局所換気はあくまで部分的に換気する方法のため、空間全体の空気を入れ替える目的には適していません。
また、排気口を設置できない場所では利用できないため注意が必要です。

②プッシュプル換気

有害物質が発生する場所に直接排気口を設置できない場合は、「プッシュプル換気」の方法をおすすめします。
プッシュプル換気とは、「プッシュフード(吹き出し口)」と「プルフード(吸い込み口)」の2つを組み合わせて換気をおこなう方法です。
具体的には、プッシュフードから空気を吹き出し、その風の流れを利用して有害物質を吸い込み口(プルフード)のほうへと誘導します。
こうすることによって、有害物質を効率的に吸い込み、外へ排出する仕組みです。
プッシュプル換気は、局所換気の排気口を設置するスペースがなかったり、吸い込み口だけでは十分に換気できなかったりするケースでとくに役立ちます。

③置換換気

置換換気とは、新鮮な空気を室内に入れて空気の流れを作り、有害なガスを外へ押し出す換気方法です。
空気には、「冷たい空気は下に向かい、温かい空気は上に向かう」性質があります。
この仕組みをうまく活用しているのが置換換気です。
具体的には、工場内の空気よりも冷たい新鮮な空気を下から送り込むことによって、室内にこもった暖かい空気が上に押し上げられ、天井付近から排出される仕組みです。
置換換気は、熱による空気の動きを利用するため、電気炉などの熱を発生させる設備がある工場に適した方法となります。

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まとめ

貸工場に換気が必要な理由は、感染予防、熱中症対策、そしてカビ対策のためです。
自動車整備工場なら1時間に8~12回、熱処理・鋳造・鉛造をおこなう工場なら1時間に10~30回、メッキ工場なら1時間に15~30回の換気が必要とされています。
貸工場での換気方法を選ぶ際は、作業内容や汚染物質の種類、作業エリアの広さなどを総合的に考慮することが大切です。