賃貸オフィスにおける原状回復義務の範囲はどこまで?工事内容と流れも解説

賃貸オフィスにおける原状回復義務の範囲はどこまで?工事内容と流れも解説

賃貸借契約を結んでオフィスを使用すると、退去する時点で借主には原状回復義務が発生します。
初めて賃貸オフィスを利用する方にとっては原状回復義務とは何かわからず、不安に感じることもあるでしょう。
今回は賃貸オフィスにおける原状回復義務とその範囲について、工事内容や流れと併せて解説します。

賃貸オフィスにおける原状回復義務の範囲

賃貸オフィスにおける原状回復義務の範囲

賃貸オフィスを契約するにあたり、まずは原状回復義務の範囲がどこまでおよぶのか確認しましょう。

賃貸オフィスの原状回復義務は範囲が広い

そもそも原状回復とは、賃貸物件の借主が退去するタイミングにおいて、すべて入居時と同じ状態にしてから明け渡すことを指します。
原状回復義務の範囲は、入居時に貸主との間で結んだ賃貸借契約の内容にもとづき決定されます。
なお、賃貸オフィスは経年劣化にともなう状況にも対応する必要があるなど、一般住宅と比較して原状回復義務の範囲が大きくなるのが特徴です。

賃貸オフィスと一般住宅における原状回復義務の範囲の違い

賃貸オフィスにおける原状回復義務の範囲は、室内を入居当時の状況にまで戻すまでが基本です。
賃貸借契約中に生じた汚れの除去はもちろん、家具や看板など室内に設置した備品も撤去しなければなりません。
一方で、一般住宅における原状回復義務の範囲は、通常を超える範囲の使用で生じた傷や汚れまでとされており、損傷の原因によっては原状回復の必要が生じないケースもあります。

原状回復義務の範囲に関する特約に注意する

賃貸オフィスのなかには、原状回復義務の範囲に関する条件を、賃貸借契約書に特約として記載しているケースがあります。
特約の具体的な例としては、以下の項目が挙げられます。

●通常使用の範囲内や経年変化などすべての損傷に対し、借主は退去時に原状回復義務を負わなければならない
●退去時は(賃貸オフィスの貸主が指定した工事会社)に原状回復に必要な工事を依頼する
●原状回復にかかる費用は借主負担とする


賃貸借契約書に特約が記載されているケースでは、借主は基本的に記載内容に従わなければなりません。
賃貸オフィスから退去する時点でトラブルに見舞われることを防ぐためにも、賃貸借契約書の内容は慎重に確認したほうが良いでしょう。

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賃貸オフィスにおける原状回復工事の範囲

賃貸オフィスにおける原状回復工事の範囲

賃貸オフィスから退去するにあたり必要となる原状回復工事の内容は、解体や塗装など多岐にわたります。
賃貸借契約を結ぶ前に確認しておきましょう。

解体工事

解体工事では一般的に、借主が入居中に賃貸オフィスへ設置した造作物を取り除く作業がおこなわれます。
具体的にはLGS(ライトゲージスタッド)と呼ばれる軽量鉄骨を用いた間仕切りや、壁の撤去などが該当します。
なお、造作物の解体および撤去作業は大きな音が発生しやすく、周囲への影響を懸念する賃貸オフィスの貸主から工事日程に制限がかかる可能性があることを覚えておきましょう。

塗装工事

賃貸オフィスの天井や壁、建具および窓などの枠周辺を対象とした塗装は原状回復工事に含まれます。
しかし、枠周辺に汚れがないケースは原状回復工事が実施されないこともあります。
塗装工事に用いられる塗料は、においが原因でトラブルに発展するケースがあり、においが少ない塗料を用いるなどの対応が求められるでしょう。
ケースによっては工事をおこなう時間帯を調整する対策も必要です。

天井設備

天井設備に関する原状回復工事は、照明に用いる電球の交換や、入居後に増設あるいは設置場所を移動させた防災設備や空調機器を戻す工事などが対象です。
なお、入居後に防災設備を別の場所へ移動させたケースのうち、入居したあとのタイミングで消防法が改正されたものは防災設備の場所を戻す工事を実施できません。
原状回復工事を進める前に必ず消防署に問い合わせ、確認を取りましょう。

クロスやタイルカーペット

賃貸オフィスの床に敷かれていたクロスやタイルカーペットは、退去する前に原状回復工事を求められる部分のひとつです。
工事では、新しい壁紙やカーペットへの張り替えがおこなわれます。

クリーニング関連

原状回復工事におけるクリーニング関連工事では、窓やサッシ、ブラインドに照明器具などが対象です。
クリーニング作業で該当部分に生じた汚れを落とせば工事完了です。
また、給湯室やトイレなどもクリーニング工事の対象範囲に含まれており、入居中に汚れた部分があればクリーニング工事を実施して原状回復がおこなわれます。

電気関連

電気関連の原状回復工事では具体的に電気やLAN線、OAタップなどの撤去がおこなわれます。
賃貸オフィスにOAフロアを導入しているケースも、電気関連工事を実施して撤去しなければなりません。
電話線とLAN線、OAタップが該当する弱電配線と、建物と関連した縦配線は異なる区分での工事が必要になるケースがあります。
原状回復工事の前に確認し、区分に適した作業をおこなうことが求められます。

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賃貸オフィスにおける原状回復の一般的な流れ

賃貸オフィスにおける原状回復の一般的な流れ

借主は退去日を迎えるまでに、賃貸オフィスの原状回復工事を済ませなければなりません。
一般的な原状回復の流れを確認しておきましょう。

原状回復義務の範囲を確認する

原状回復の流れとしては、まず賃貸借契約書に目をとおし、原状回復義務に関する範囲などを確認することからスタートします。
主なチェック項目は、工事区分と工事期間、解約手続きの方法および解約の予告期間の4点です。
退去連絡の期間を意味する予告期間は基本的に短くても3か月、長いと半年間に設定されているケースもあります。

原状回復工事の見積もりを施工業者に依頼する

原状回復が必要な範囲を確認したら、次の流れとして工事費用の見積もり依頼が必要です。
特約などで施工業者が指定されているなら、現地調査を含めて見積もり依頼をおこないましょう。
指定がないケースでは賃貸オフィスの貸主と協議のうえ、見積もりを依頼する業者を選ぶ、もしくは借主が自ら選んだ業者に見積もり依頼を出します。

原状回復工事の期間を確認する

施工業者による現地調査および見積もりの確認を終えたら、次の流れとして工事の期間を明確にすることが求められます。
工期の確認にあたっては、原状回復工事の内容や工事費用を把握し、借主の合意を得たうえで進められます。
借主から原状回復工事の合意を得た施工業者は、そのあとに計画書を作成するため、この計画書を参考に工期を確認してみてください。
なお、賃貸オフィスにおける原状回復工事は退去日までの完了が必須であり、工事の遅れは事前に理解することが大切なポイントです。
指定の期日までに原状回復工事を終えるためにも、施工業者を選んだら入念な打ち合わせを実施し、詳細な部分までスケジュールを確認しましょう。

完了確認と引き渡し

施工業者による原状回復工事が完了したら貸主に立ち会いを依頼し、賃貸オフィスの確認作業に移行します。
工事内容および結果に問題がなければ、そのまま貸主に賃貸オフィスを引き渡しましょう。
完了確認の段階で問題が発覚したら、責任の所在確認をおこなうとともに、必要であれば追加工事を実施します。
賃貸オフィスの引き渡しが完了すれば、退去にともなう原状回復に関する一連の流れは終了です。

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まとめ

賃貸オフィスにおける原状回復義務の範囲は一般住宅より大きく、特約には基本的に従わなければなりません。
解体作業や天井設備関連など、原状回復工事の内容は多岐にわたります。
基本的には原状回復の範囲確認から見積もり依頼と工期の確認、引き渡しの流れで進むため、事前に確認したうえで対応にあたりましょう。

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