事業用物件の造作買取請求権とは?行使できないケースや特約について解説

事業用物件の造作買取請求権とは?行使できないケースや特約について解説

事業用として利用していた賃貸物件を明け渡すとき、畳や建具などを貸主に買い取ってもらえる場合があります。
これは、「造作買取請求権」と呼ばれ、一定の条件を満たすことで借主に与えられた権利です。
そこで、造作買取請求とはなにか、行使できないケースや特約について解説します。
事業用の賃貸物件をご検討中で、かつ造作買取請求権について知りたい方は、ぜひ参考になさってください。

事業用の賃貸物件を借りる前に知っておきたい「造作買取請求権」とは?

事業用の賃貸物件を借りる前に知っておきたい「造作買取請求権」とは?

賃貸物件を事業用として借りる際に、把握しておきたいのが「造作買取請求権」です。
ここでは、造作買取請求権について解説します。

造作買取請求権とは

造作買取請求権とは、借主が建物に付加した造作(ぞうさく)を、貸主に対して時価での買取を請求できる権利のことです。
「造作」とは、建物に付加されたもので借主が所有し、かつ客観的に便益を与えるものを指し、建具や畳、エアコンなどが該当します。
わかりやすくいえば、建物に付加されることにより効用を発揮し、取り外すことで造作としての価値が減少するものを指します。
そのため、テーブルや椅子、食器などは造作ではありません。
また、買取請求できる造作は、便益を与えるもののため、借主が特殊な目的に使用するために付加した設備は含まれません。
これらは、借地借家法第33条にて定められており、すべての要件を満たしている場合に貸主に請求することができます。
なお、造作買取請求をおこなうには、貸主の同意を得て付加したものである必要があります。
つまり、事前に同意を得ていない場合は、買取請求の対象外となるため注意が必要です。

造作買取請求権が利用できるタイミング

造作買取請求権が利用できるのは、賃貸借契約が終了したタイミングのみです。
借地借家法第33条でも「建物の借主は賃貸借期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、貸主に時価で買い取るべきことを請求できる」と定めています。
したがって、貸主との賃貸借契約が終了した場合に、貸主に造作の買取請求がおこなえます。
このように、造作買取請求ができるのは、造作であること、貸主の同意を得ていること、賃貸借契約が終了するタイミングであるという3つの要因が必要です。

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事業用物件で造作買取請求権を行使できないケース

事業用物件で造作買取請求権を行使できないケース

造作買取請求権は、どんなものでも行使できるとは限りません。
ここでは、行使できないケースを詳しく解説します。
行使できないおもなケースは、以下のとおりです。

●価値が減少しないもの
●放棄の特約が設けられている場合
●建物の価値や利便性を高めるものではない場合
●貸主の同意を得ていない造作の場合
●借主が所有しているとはいえない場合


それぞれのケースについてご説明します。

ケース①価値が減少しないもの

前述したように、造作買取請求権は建物に付加されたもので、建物から取り外すことで価値が減少するものが対象となります。
たとえば、畳や建具以外にも、電気・水道設備なども該当します。
これは、取り外してしまうと、生活に悪影響を及ぼしたり不便を生じたりする可能性があるため、買取請求権を行使することができるのです。
一方で、取り外しても価値が減少しない電化製品や家具などは、買取請求権を行使することはできません。
たとえば、椅子やテーブルは撤去しても何の問題も生じず、どこにでも移動でき利用することができます。
このように、建物から取り外すことで価値が減少しないものは、請求権の対象とはならないため注意しましょう。

ケース②放棄の特約が設けられている場合

賃貸借契約では、「借主は造作買取請求権を放棄する」といった特約が設けられている場合があります。
この特約が設けられている場合は、買取を行使することができないため注意が必要です。
ただし、平成4年8月1日よりも前に締結された賃貸借契約の場合は、そのような特約は無効となります。
なお、特約については、次章で詳しくご説明します。

ケース③建物の価値や利便性を高めるものではない場合

建物の価値や利便性を高めるものではない場合は、買取請求権が認められないため注意が必要です。
たとえば、フロア固定タイプのカフェテーブルは、カフェやバーを経営する際は役に立つかもしれません。
しかし、それ以外の用途では、かえって邪魔になってしまいます。
そのほかにも、掘りごたつ式の小上がりは、居酒屋でなければ価値がないでしょう。
このように、特定の用途や業種のみで利便性が得られるような造作は、買取請求権の対象となりづらいため注意が必要です。

ケース④貸主の同意を得ていない造作の場合

造作買取請求権は、貸主の同意を得たうえで設置された造作であることが前提です。
そのため、貸主の同意なく作られたものは、請求することはできません。

ケース⑤借主が所有しているとはいえない場合

借主が所有しているとはいえないものであるときも、造作買取請求権を行使することはできません。
具体的にいえば、建物と切り離して考えることができない状態の場合です。
たとえば、借主が壁内に断熱フォームを充填しても、これは建物の一部とみなされる可能性が高いです。
そのため、貸主に請求することはできません。

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事業用物件における造作買取請求権の特約について

事業用物件における造作買取請求権の特約について

前述したように、賃貸借契約では、借主は造作買取請求権を放棄するといった特約が設けられている場合があります。
ここでは、造作買取請求権の特約について詳しく見ていきましょう。

「造作買取請求権の放棄」の特約とは

貸主によっては、造作買取請求権を煩わしいと感じている場合もあります。
そのため、「借主は造作買取請求権を放棄する」といった特約を設けているケースも少なくありません。
以前の旧借家法では、造作買取請求権は強行規定とされており、特約を記しても無効とされていました。
つまり、旧借家法の適用がある契約の場合は、放棄する旨の特約が記されていても、造作の要件が満たされていれば、請求権が認められていました。
しかし、平成4年8月1日に施行された借地借家法で、造作買取請求権は任意規定と改められたのです。
つまり、改正後に放棄する旨の特約を設けた場合は、その特約が有効とされることになります。
そのため、改正後の借地借家法の適用がある契約においては、造作買取請求権の放棄する旨の特約があった場合、借主は請求権を行使することはできないため注意しましょう。

造作買取請求権を利用するうえでの注意点

造作買取請求権を利用する際は、まずは放棄に関する特約が設けられていないか確認することが大切です。
特約がない場合は、次に要件を満たしているか、また造作に該当するのかもチェックしましょう。
現在は、エアコンや水道設備なども対象です。
契約終了時に買取を希望する場合は、設置する前に必ず貸主の同意を得ておきましょう。
また、買取はそのときの時価で計算され、権利を主張できるのは賃貸借契約が終了したタイミングです。
造作を買い替えるタイミングや、契約期間中に買取請求権を行使することはできないため注意しましょう。

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まとめ

造作買取請求権とは、借地借家法第33条に基づき、借主が付加した設備について要件を満たした場合に、造作を買い取ってもらえる権利のことです。
ただし、建物から取り外すことで価値が減少しない場合や放棄の特約が記載されている場合などは、請求権を行使できないため注意しましょう。
造作買取請求権を利用する際は、賃貸借契約が終了するタイミングであること、また時価での取引になる点も把握しておきましょう。

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